共通メニューなどをスキップして本文へモバイル版トップページへ
 
大阪市立図書館
 
 
大阪市立図書館
画面下にアクセシビリティツールを表示します   

 
 
 
バナー
 

明治前期大阪編年史稿本と綱文データについて(解説)

編纂者 小田 康徳(大阪電気通信大学教授)

 大阪市が明治34年(1901)に事業を開始した『大阪市史』の編纂過程においては、その業績の一として当時の市史編纂長幸田成友の指導下『大阪編年史料』も作成されていた。これは、上古より明治22年末までの出来事を年月日順に整理し、史実の一つずつについてその内容を要約する綱文を立て、それに対応する史料を配列、筆記していったもので、整理には7年かかったと記されている。それらは全部で131冊の稿本に整理されていたものであるが、そのうち92冊分すなわち上古より慶応3年(1867)末までの分が昭和40年(1965)度より54年(1979)度までに順次校訂されつつ『大阪編年史』全27巻として大阪市より刊行されてきた。現在大阪の歴史を知る上で基礎的な史料集であるとして高く評価されているものである。

 大阪市では当時よりこの続きをさらに調査、整理し、出版して完結させる意図を有していたが、さすがに明治期に作成されたというところから避けることのできない大きな制約もあったのであろう、明治期に関する大阪編年史料は、史料調査の面で問題が多く、しばらく編集刊行を見合わせていたものであった。また、対象とする地域も旧三郷地域に限られていた。今回の『明治前期大阪編年史稿本』は、まさしくこうした欠陥を克服するため昭和54年度より新たに事業を進め、完成させたものである。

 もちろん、明治元年(1868)から22年(1889)末までという時期は、ちょうど鳥羽伏見戦争から始まり、明治政府がその形を整え、大阪においてもその影響が行政のみならず経済、社会、文化、教育、科学、技術、芸術あるいは思想等ひろく現れ、明治22年4月の市制実施とともにいよいよ近代社会としての方向性を明瞭にしてくる時期にあたっている。この時期の大阪においていったいどのようなことが起き、どのような変化が生じたのか。どのような人々が何を目指して活動し、どのような影響を与えたのか。それらに関わる史料を集め、考察のための基礎を確立することは、現代大阪の基礎が築かれた時期であるだけに興味の尽きないものがある。『明治前期大阪編年史稿本』の編纂作業では、このような考えでもって可能な限り史料を探し、出来事を記録することに努めたのである。

 『明治前期大阪編年史稿本』では、史料となるべきものについては当初の『大阪編年史料』を出発点としたが、さらに、可能な限り広く調査することとした。さいわい、『新修大阪市史』の編纂事業が同時進行していたので、その調査過程で多くの地方史料・行政文書あるいは新聞記事などを調査する便宜に恵まれた。また既に刊本になっている諸記録・文書なども参考にすることができた(別掲「明治前期大阪編年史典拠資料一覧」参照)。この調査と編纂作業は実質的に昭和50年代半ばから始まり、今日まで二十数年の年数を数えることとなった。この間多くの歴史的な出来事を新たに見出し、それに関わる史料を提示することができ、また、出来事としては知られていても、それに関する新たな史料をさらに多く発見することができた。幸田成友時代に2,171件を数えていた綱文数は一般綱文だけでも9,478へと増加し、その他と合わせると18,790件という件数となり、また新規に追加できた史料も実に多数に上った(別掲「総括表」参照)。まさに新規の編纂作業であったといっても過言ではないと思う。ただ、結果としてはまことに大部なものとなってしまった結果、当初の刊行計画は、財政的な面から困難に直面することになった。

 本綱文データは、こうした事情を考慮し、この『明治前期大阪編年史稿本』を広く活用して頂くために作成したものである。ここには、『明治前期大阪編年史稿本』に組み込まれた諸史料から読み解いた歴史的事実の要約が示されている。まさに明治前期の大阪の姿を知るための基礎的事実が詰め込まれているのである。これらの事実認識をふまえて考察する時、さらに豊かな歴史認識の確保が可能となるであろう。もちろん、重要な問題でありながら、なお編集者の視野の狭さから見落としている史実も多いと思う。お許しを乞うとともに、広く情報をご提供いただけるよう改めて期待するものでもある。

 なお、各綱文に対応するそれぞれの史料については、写真・書籍等を複写、プリントしたものを台紙に貼り付けた形で整理し、年月日順にファイルに綴じて保管している(656巻におよぶ)。ただし、これについては、撮影条件の不十分さから生じた解読不能箇所や意図しない撮影漏れなどもあり、多くの不備を抱えていることも付記しておかねばならない。また、本データに記載する出典表記は後日の出版とそのための原稿作成を前提として心覚え程度の位置づけで作成したため、必ずしも充分な情報を表示していない。なかでも新聞については煩雑さを避けるため年月日を省略し、かつ複数存在するものをいちいち注記しなかった。これらは史料を貼り付けた台紙の方にすべて表記しているものである。本稿本データはこのような欠陥を持っているけれども、利用の可能性が大きいことは、再度繰り返すことになるが、これまた疑いないものである。実際的な利用の仕方は別に記すこととするが、ぜひ大いに利用して頂きたい。

 『明治前期大阪編年史稿本』については、当初編集委員は北崎豊治(大阪経済大学名誉教授)・服部敬(花園大学名誉教授)・福山昭(大阪教育大学名誉教授)の三氏が任命され、作業は当時大阪市史料調査会調査員だった小田が担当したが、作業が長引く中、編集委員の任命はなくなり、もっぱら小田の作業のみが継続された。長期にわたる編纂事業を支えて頂いた大阪市・大阪市史編纂所ならびに史料調査会に感謝する。

〈2008年10月3日記〉

添付資料

  1. 編纂の基本方針
  2. 明治前期大阪編年史 総括表
  3. 明治前期大阪編年史 典拠史料一覧