渡辺邸は、大阪市淀川区にあった、市内最古といわれた民家です。 『新修大阪市史 第3巻』*1には、「渡辺家は、源頼光の四天王の一人渡辺綱の後裔とも伝えられ、広大な主屋を中心に、門長屋や土蔵その他、多くの付属建物を巡らした豪壮な屋敷構も、この地域の古くからの豪族であったことを物語っている。」とあります。「後々の改造が多いとはいっても、その特異な民家形式の復元される原形は、近世初期を下らぬ約三五○年以上の年月を経過した家作と推定され、大阪府の有形文化財に指定されている。」ともあるように、淀川区内でもっとも古いお屋敷であったといっていいでしょう。 『大阪府の民家 2』*2には、「ところが、この残存部分を能う限り復原してみると、従来見られなかった型となり、それらの点から推してその建築年代が十七世紀初頭を降らないものと推定されるのである。」とあり、その建物の現状を述べ、復原しうる内容について考察されています。そして「この家は、土間が極めて広いこと、平面が他に類例のないこと、わかる限りの柱間装置や、剤の古さ、および木割の太さ、建ちの割合に低いこと等から判断して、特異な民家であり、その建築年代は極めて古いと思われる。」と結論付けています。 『近畿の民家』*3にも、「門長屋や蔵・附属舎で囲まれた屋敷構えの中に壮大な主屋を配し、古くからの土豪の屋敷といった感が深い。」とあり、復原しうる内容についての考察が述べられています。 『わが町昔さが誌』*4には、「…室町後期頃に、渡邊九良左衛門尉源忠綱という豪族が建てたものだと伝えられています。」という伝承についても書かれています。また、この本に「もちろん私的な屋敷ですから、一般の方が中に入って見学、撮影することはできません。」とあるように、個人宅として使用されていました。 なお、大阪府教育委員会は、平成24(2012)年4月に、文化財指定を解除しました。現在は解体され、存在していません。*5